3.周辺の社会特性
1.集水域の特性
この指針では、汐川干潟の集水域を、汐川を始めとする六つの河川等流域を合わせた面積約6,870ヘクタールの地域と推定しました。集水域は、河川や水路を通じて、水、土砂、有機物などを干潟に供給します。
したがって、この地域の土地利用や社会活動は、汐川干潟の環境に様々な影響を与えていると考えられます。
集水域は、大半が市街化調整区域で、面積の6割以上を農用地が占めています。畑作や畜産が盛んで、両市の農業生産基盤として大きな役割を果たしています。市街地については、田原市中心部のほか新たに区画整理や住宅団地の整備も進んでいます。域内の人口は約5万人(平成12年推定値)を数え、現在もなお増加傾向にあり、都市機能の整備が逐次進められています。特に、汐川流域では市街地の集積が高く、汐川は田原市街地の排水を調整するうえで重要な役割を担っています。
なお、豊橋市と田原市は、農業集落排水事業や特定環境保全公共下水道を含む公共下水道事業を進めており、集水域内にも数多くの処理場を設置しています。合併処理浄化槽普及率等も含めた生活排水処理率は、平成13年度末現在、豊橋市で81.6パーセント、田原町(当時)で91.0パーセントとなっています。また、両市は、合併処理浄化槽や水質汚濁防止施設を設置しようとする家庭又は事業所に対して助成を行い、家庭や事業所における水質保全の取り組みを促進しています。
2.臨海域の特性
この指針では、汐川干潟の北方にある田原地区工業用地と大崎地区工業用地及び周辺の泊地等を臨海域と称します。ここは、かつて干潟・浅海域を埋立て等により整備した地域で、今日の汐川干潟は、域内にある幅約700メートルの泊地を通じて、潮の干満などにより外部(三河湾)と水交換を行っています。また、三河港大橋や遠方に見える工場群は、今日の汐川干潟の景観として定着しています。
臨海域には、輸送機器、金属、化学、住宅などさまざまな業種の事業所が数多く立地し、三河港最大の製造拠点を形成しています。また、田原地区には国内自動車企業の製造・輸出事業所が、大崎地区には海外自動車企業の整備・輸入事業所が立地し、神野地区も含め日本最大の自動車輸出入拠点を形成しています。この地域は、豊橋市と田原市の経済基盤として、また雇用の場として大きな役割を果たしています。
図4 汐川干潟の集水域と臨海域