5.自然環境
1.地質
集水域は、汐川流域から沿岸部にかけての低地は沖積層で、それ以外は洪積層(渥美層群)に覆われています。沖積層を構成する、砂礫、砂、シルトは、固結度が低いため降雨時などに河川へ流出しやすく、それらが汐川干潟に堆積するものと考えられます。
2.動植物
植物
汐川干潟及び周辺の植物として、これまでに84種類の記録がありますが、本指針では、汐川干潟を代表する種として、シバナ、ハママツナなどの塩生植物にヨシを加えた12種を塩性湿地植物と称します。この中で、最も面積が大きく分布域が広いものはヨシ群落で、特に、汐川と切畑川の河口部に発達しています。ヨシ群落の周辺や船だまりでは、シバナやハママツナの小規模な群落が分布し、周辺の紙田川河口部ではシオクグやフクドの群落も見られます。また、堤防の直下には、ハマボウやウラギクが生育して います。なお、ヨシ群落は、窒素を除去しリンを吸収するため、水質の浄化に役立っていると考えられます。
図7 汐川河口のヨシ群落
図8 汐川河口のシバナ群落
底生動物
汐川干潟では、近年(1995~2001年)、ゴカイ、貝、カニなど108種の底生動物の生息が確認されています。その内の約半数を貝類が占め、貝の種類が特に豊富と言うことができます。コケゴカイ、オキシジミ、チゴガニなどは分布域が広く、干潟の各所に生息しています。逆に干潟の沖合に生息するオオノガイ、ヨシ群落周辺のみに見られるフトヘナタリ、アシハラガニなどは、分布域が限られた種です。なお、これらの底生動物は、堆積した有機物を捕食、あるいは水中の栄養分をろ過することなどにより、干潟の底質や水質の浄化に役立っていると考えられます。
図11 フトヘナタリ
図12 アシハラガニ
鳥類
汐川干潟及びその周辺では、これまでに253種、近年(1996~2001年)だけでも167種の鳥類の記録があります。これは、愛知県全体の393種の約65パーセントに相当し、鳥類の種類数が特に多いと言うことができます。汐川干潟を代表する種として、全国的に見て種類数と個体数がともに多い、シギ・チドリ類があげられます。特に、ここで越冬するダイゼンとハマシギは、「レッドデータブックあいち」で地域個体群(LP)にあげられており、全国的に見て重要な個体群と言うことができます。これらは、まず、潮の引き際に干潟の南東部に集まり、潮が引いて行くにつれて干潟全域に広がる傾向があります。また、シギ・チドリ類は、長距離の渡りをすることで知られています。汐川干潟では、毎年のようにオーストラリアや北海道東部で標識を付けられた固体が観察されており、東アジア地域における、シギ・チドリ類の渡りの中継地であることが明らかになっています。
図13 ハマシギ
図14 ダイゼン
図15 キアシシギ
オーストラリア・クイーンズランド州で標識を付けられたキアシシギ
図16 トウネン
3.絶滅のおそれのある種
汐川干潟に生育・生息する動植物の中には、国内または県内で絶滅のおそれがあるとされる種が数多く含まれています。当該種の例をあげると、ウミニナは干潟の広く各所で普通に見られ、シバナ群落は小規模ながら安定しており、数は少ないもののホウロクシギが定期的に渡来します。また、汐川河口域のヨシ群落には、オカミミガイなど希少な貝類が生息し、その周辺には県下では数少ないハマボウ群落があります。
一方で、「モク」の呼称で知られるアマモ類は1970年までに、アゲマキガイは1980年までに汐川干潟で絶滅したと考えられています。干潟や河口域の湿地(ヨシ原等)は、国内及び県内で著しく減少してきました。汐川干潟はそうした環境にしか住むことができない動植物にとって残された数少ない生育・生息の場であり、生物種の保存のうえで重要と言うことができます。
図17 オカミミガイ
絶滅危惧IB類(愛知県)
図18 ホウロクシギ
絶滅危惧II類
(環境省・愛知県)
図19 ウミニナ
準絶滅危惧種(愛知県)
図20 アゲマキガイ
絶滅(愛知県)
区分
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塩性湿地植物
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底生動物
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鳥類
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確認された種の数(1995年~)
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12種
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108種
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167種
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絶滅危惧種または希少な種の数
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国内
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県内
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国内
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県内
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国内
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県内
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3種
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4種
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24種
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21種
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21種
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41種
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内訳
|
内訳
|
内訳
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環境省・愛知県発行のレッドデータブック |
絶滅危惧IA類(CR) |
0
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0
|
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2
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3
|
2
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絶滅危惧IB類(EN) |
0
|
0
|
4
|
2
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4
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絶滅危惧II類(VU) |
0
|
1
|
4
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11
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18
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準絶滅危惧種(NT) |
3
|
1
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11
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5
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17
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他の研究書
木村他2000
和田他1996
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絶滅寸前 |
0
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2
|
3
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危険 |
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17
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希少 |
4
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