

噂の先へ(磯村 彩葉)

愛知大学豊橋キャンパスには、「夜になると兵隊の幽霊がでる」という噂がある。おそらく、明治41年から36年間、陸軍の基地として使われていたからだろう。当時建てられた西洋風の建物が所々に見受けられ、夜になると不気味さが漂う。
しかし、実はこの土地、豊橋でも有数の、戦禍を免れた地帯なのだ。1945年6月19日、豊橋は空襲に見舞われた。市街地の約70%が焼失した大規模な空襲だったが、この土地は空襲を受けず、死者はでていない。やはり噂は噂なのだろうか。
朝、校門をくぐると、出迎えてくれるのは3匹の猫。心地のいい木漏れ日。賑やかな足音。戦争の影なんて見えてこない。しかしふと「兵隊の幽霊がでる」という噂を思い出すと、学内にある石碑や古い建物が気になったりする。誰が作ったのか分からないこの噂は、私たちに過去のことを教えてくれるようだ。ならば、代々伝えていこう。
みなさん、愛知大学豊橋キャンパスには、夜になると兵隊の幽霊がでます。
作品一覧(vol.1)に戻る