

「救い」のピラミッド公園(若子 尚弘)

「向山緑地」という公園内に、世界遺産のモニュメントが置かれたシュールな場所がある。「ピラミッド公園」。ピラミッドや万里の長城といった世界遺産のモニュメントがあるので皆がそう呼んでいるのだが、正式名称はあくまでも向山緑地。正式名称よりも俗称の方で親しまれている。
向山緑地が竣工したのが昭和41年だから、このピラミッド公園の歴史は結構古い。市民文化会館と隣接しているため「世界の歴史を身近に感じてもらう」がコンセプトなのだと、市役所職員が教えてくれた。モニュメントの中に「ノアの方舟」をモチーフにしたものがあるのだが、ノアの方舟は旧約聖書に出てくる舟だから、それを「世界の歴史」というのは少し違和感がある。もしかしたら設計者は、この世の終わりに世界遺産を尻目に、人々がノアの方舟で漂い救われる姿を想像していたのか。そう考えると、ノア達が洪水を乗り越えたように、ノアの方舟で無邪気に遊ぶ子ども達も、今の混沌とした世上でさえ慈悲を与えられるのではないかと、ホッとした気持ちになる。非日常的なこのモニュメントが、行き詰まりを感じた者の癒しの場になって欲しいと思う。
作品一覧(vol.1)に戻る