3月のコラムは、2月に引き続き1人の男の子を育てるシングルマザーMさんが執筆されます。(2・3月の全2回)
【Mさんのプロフィール】
埼玉県出身 東京都在住
10年前離婚して1人の男の子を育てるシングルマザー
福祉系情報発信のコンテンツ制作などに従事
しんぐるまざあず・ふぉーらむ所属
困ったら行動する勇気 助けてと言える大人になる
息子が2歳くらいの頃、友達から「子どもにどんな大人になってほしい?」と聞かれた。
「困ったときはひとりで抱え込まずに助けてと言える大人になってほしいな」と、何気なく答えた。息子には、親がいなくなった世界でも周りと助け合いながら自立して生活してほしいと願って話した言葉だった。だけど、何か胸の奥がもやもやした。
そのもやもやの正体は「私自身は助けてと言える大人なのか」という疑問だった。
私は息子が1歳の時に離婚し、息子と二人暮らしの生活を始めた。引っ越したばかりで頼る人もいなかった。
当時を振り返ると、子育てのしんどさをひとりで抱えて、もがいていたことばかりが思い返される。
息子と私が同時にインフルエンザにかかったとき、高熱と吐き気のなか、息子の看病のために、廊下を這って移動した。しんどくてどうしようもなく、涙があふれた。
まだ留守番ができない息子を連れて買い物に行ったが、お店に到着してすぐに泣き叫んだため、何も買えずにお店を後にしたこともあった。
学生時代からずっと仲の良い大好きな仲間がいたが、子ども抜きで遊ぼうという企画が盛りあがった時は、衝動的にそのグループから抜けて距離をおいたこともあった。
こころの奥底では、誰かに助けてほしいと思っていた。
なぜ助けてと言えなかったのだろう。
相手に迷惑をかけたくないとか、いろいろしてもらったらお返しができるか気になってしまうとか、何かをしてもらい続ける関係は対等でない感じがするとか、いろいろな理由があったけれど、結局は困っていることを伝える勇気がなかったのだと思う。
でも、子どもにはひとりで抱え込んでほしくない。困ったときは周囲に助けを求めてほしいと願っている自分がいた。
心のもやもやをなくすために、まずは自分から頼ってみよう、そう心に決めた。その時から、私は市のお便りを読みこんで支援情報を探したり、市や支援団体が開催しているイベントに出掛けてみたり、いろいろなつながりを求めて動き始めた。
時には子ども込みで遊ぶ友達を募ってみたり、信頼できる人に病気の時にSOSを出したりもした。また、自分ができる範囲で、助けたり、お礼をしたりすることも忘れないようにした。
すると、頼りあえる関係の友達ができ、頼れるたくさんの支援が行政や支援団体から提供されていることを知ることができた。また、仕事で福祉系の支援情報を発信する機会に恵まれ、知ることのできたノウハウもある。以下3つにまとめるので、よかったら参考にしてほしい。
(1)行動が大切。助けてほしい内容を具体的に伝えよう
近所付き合いなどが気薄な現代では、困っている本人が声を出さないと、気付いてもらえない。また、行政の支援を受けるためには、申請が必要なことも多いので、行動が必要になってくる。勇気やエネルギーがいることだけど、どうか行動してほしい。
また、困っていることを簡潔に伝え、助けてほしい内容を具体的に伝えると、相手に行動してもらいやすい。時には、思うように助けてもらえないこともあるかも。でもどうかあきらめないでほしい。世の中、捨てる神よりも拾う神の方が絶対に多いから、再度別の方法を探してみてほしい。
(2)頼る力は育むもの。事前につながりをもっておこう
「受援力(じゅえんりょく)」という言葉がある。助けを求めたり助けを受けたりする心構えやスキルのことを表す。思えば、このような力を子どもの頃から身につける機会があまりなかったように感じる。大人になった今からでも、受援力を自分で育んでみるのはどうだろう。
助けてと伝えることはエネルギーがいる。困ったときほど、そのエネルギーが湧いてこないこともあるかもしれない。だから少し元気なときに、支援団体や行政のサポートなどにつながってみることが大切だと思う。
(3)行政への頼り方
まず、ネットで「支援名+地域」で検索してほしい。例えば、自分がひとり親の手当である児童扶養手当がもらえる対象かを知りたいときは、「児童扶養手当 豊橋市」で検索して、ヒットした市のサイトを参照してほしい。書いてある内容がわからない時は、記事の一番最後の方に問い合わせ先があるので、その電話番号にかけてみると、丁寧に教えてもらえるはずだ。
漠然と困っていてどんな支援があるかわからない時は、子育て支援課で、ひとり親家庭の自立に必要な支援をしてくれる、母子・父子自立支援員に相談するのもひとつの方法だと思う。
最後に、忘れられないエピソードを一つ紹介したい。
困ったときに、頼りにしている方がいる。かつてシングルマザーだった方で、すでにお子さんは成人している。私と息子がコロナにかかった時は、たくさんの食料に温かいメッセージが添えられた段ボール1箱をすぐに送ってくれた。
ある時、私が「助けてもらってばかりでどうお返しをしていいかわからない」と伝えると、彼女は「私もひとり親で大変だった時に、周りの人にたくさん助けてもらったから、その恩を今返しているの。だから、あなたもお礼はこの先困った人に恩送りしてね」と微笑みながら答えた。
このコラムは、彼女の言葉にある恩送りのつもりで書いた。助けてと言えないかつての私のような人に届いたらとてもうれしい。