【ひとり親家庭向けの子育てコラム】
~五十嵐岳さんインタビュー~
第4回目「父との再会、両親について思うこと」
父に会いたい
―離婚後、岳さんはお父さんに会われていたのですか。
僕が小学校6年生、オーストラリアにいるときに父と母が離婚して、父だけ日本に帰りました。それから会っていなかったのですが、高校生くらいのときに、母に「父に会いたい」って言ったら、「良いよ」って言ってくれたんです。それで日本に行ったときに父に会ったんです。父方の親戚は多くて、いとこ、おじ、おばにも会いました。
―お父さんに会いたいと思ったのは?会ってどうでした?—
父が好きだから。会ってみた感想は、変わってないなあって(笑)。3,4年ぶりに会うから、僕、緊張していたんですよ。でも、父は「よっ」って感じで(笑)。友人としてはすごく面白い人だと思う。いい友達って感じです。
―お父さんは、どんな方ですか?—
父は、すごく人に愛されるダメな人(笑)。人から見たらいい親じゃないのかもしれないけど、僕にとってはいい親でした。僕は長男(第一子)なので父と過ごした時間はきょうだいの中ではいちばん長かったですね。
子どものとき、父から影響を受けたエピソードといえば、お客さんとしてもてなしてもらったときに、嫌いな食べ物がテーブルに並び、食べたくなさそうにしている僕に「向こうは不味いものを出していると思って食事を振舞っているわけではなく、美味しいものを出しているつもりだから、ちゃんと手をあわせて食べなさい」って言われたことですね。
父にはいろいろな友達がいて、小学生の時は、著名人やLGBTの方、いろいろなマイノリティの方とお話ししました。父に連れられていろいろな人に会ったおかげで、自分も人に対してあまりバイアスを感じず、子どもの頃からいろいろな人がいるっていうことを受け入れて、今の自分があるって思っています。
「好きだから会いたい」という気持ち
―離婚後、子どもを別れた元夫(別居親)に会わせることを考えると、私自身が辛くなってしまうこともあります。
特に離婚したばかりの時は、親も辛いと思います。僕の母も辛そうでした。でも、何年か経つと時間が解決してくれたり、人の気持ちは変わったりするから、大丈夫になることもあると思いますよ。
―なるのでしょうか…。まだ想像できないですが、岳さんのストレートな「好きだから会いたい」という気持ちを聴いて、私から見た元夫と、子どもから見たお父さんって違うし、お父さんが好きっていう子どもの気持ちを大切にしたいなと思いました。お話したことによって私自身の重たい気持ちが少しだけ軽くなった気がします。
子どもの前で相手の人の悪口は言わないで
—最後に、ご両親が離婚した時に、当時思っていたこと、大人になった今、思うことはありますか。
僕が小学校6年生の時に両親が離婚して、僕はそれについて何か思っていたんだろうけど誰にも相談していなくて。離婚後、母が父の悪口を言っていたので、僕は気分が悪くなって、「何で結婚して何で子ども4人も生んだんだよ!」って母に言ったことがありました。母にとっては辛い言葉だったかもしれないです。保育士になった時に、離婚する保護者の方には「人だから嫌なことはあるけれど、子どもの前で相手の悪口は言わないでください」ってお伝えしていました。
あと、子どもって心で分かったと思っていても、情報として分かっているだけの場合があるから。激しいものが出てくるかもしれないけど、思春期・反抗期には抱えているものを出した方が、子どもが健康でいられると思います。
子どもの頃、父母も僕を大好きでいてくれました。母と父なりに大切にしてくれて、自分は愛されて、とても幸せだったと思います。
~インタビューの感想~
柔らかい物腰で何でもオープンにお話をしてくださった岳さん。初めてのインタビューでしたが、おかげさまで緊張せず、いつのまにか相談に乗ってもらっているような感覚になりました。ありがとうございました。
そして、毎日頑張っているひとり親のみなさんに、この記事が寄り添えたら幸いです。
(来月は父子家庭のお父さんのコラムをお届けします)