平成28年度
第23回
選考 |
平成28年9月2日、豊橋市役所会議室において第23回丸山薫賞の選考が行われ、議論の結果、金井雄二さんの詩集『朝起きてぼくは』(思潮社 刊)に決定しました。 |
選考経過 |
選考委員会は2016年9月2日、豊橋市役所で開催された。昨年と同じ菊田守、新藤凉子、高橋順子、八木忠栄、八木幹夫の5名の委員が選考にあたった。
候補詩集は、金井雄二『朝起きてぼくは』相沢正一郎『風の本‐<枕草子>のための30のエスキス』平田俊子『戯れ言の自由』安藤元雄『樹下』秋亜綺羅『ひらめきと、ときめきと。』新延拳『わが流刑地に』の6冊。
どの方も詩歴の長い詩人たちである。どの詩集にもそれぞれ魅力があって、選考するのも大変なことだと思わされる。
ともかく、司会進行を高橋順子が行うことで、選考を進めることになった。
選考委員の方々は、推薦作についてお話し下さいとの高橋順子のうながしに、各選考委員たちが自分の推薦する候補詩集について、どの点を高く評価するのかを発表し、それに対し、外の選考委員たちの忌憚のない率直な意見も飛びかった。
そうするうちに、金井雄二氏、相沢正一郎氏、安藤元雄氏の詩集が残った。
平田俊子氏の詩集は、紫式部文学賞を受賞していたこともあり、残念ながら見送られた。
秋亜綺羅氏の詩集は、未完成との意見があり、またの機会を待つこととした。
新延拳氏の『わが流刑地に』は、全体を覆っている所在ない気分がテーマだと思われるが、イメージが散漫であるとの指摘があり、この詩集も見送りとなった。
はじめに金井氏、相沢氏、安藤氏が残ったことを報告したが、これからが大変だった。
安藤元雄氏の『樹下』は、抜きん出て完成された詩集であった。しかし、観念の詩だとの声もあった。選考委員一同、『樹下』を高みにおいて考えたことは、間違いない。
金井雄二氏の詩集は、自然体で、日常をさりげなく書いていて、その中での心象風景を浮かびあがらせて、読者を捕まえてしまう。いい意味での私小説、少し物足りなさを感じるところもある、という意見もあった。
相沢正一郎氏の詩集においては、30の詩篇には題名がない。『風の本』を開くことによって、私たちは現実だけではなく、死者と出会うことも出来るというひろがりを、持つことも出来る。枕草子をふまえて一気に面白く読んだという選考委員もいたが、枕草子という本の題名を借りているようでという委員もいた。話し合いの結果、金井雄二氏が支持を得た。
金井氏から、『朝起きてぼくは』を頂いたあとで、彼の個人誌『独合点』を読んだ。「ぼくは文学というものは、その小さな声、がすべてなのだと確信している。人々の生活のなかで、確実に発せられている、小さな声。それを言葉ですくい取る。作家、詩人。ぼくはそれこそが本当の文学であると思っている。」とあった。
そのような観点から書かれた詩集が認められたということは、小さな声の果てに、高くて広い世界が開けているということだから、まことにおめでたいことです。
(文中敬称略)
(選考委員 新藤凉子 記)
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受賞者紹介 |
金井さんは1959年神奈川県相模原市生まれ。
1993年、第1詩集『動きはじめた小さな窓から』で第8回福田正夫賞を受賞。1997年、第2詩集『外野席』で第30回横浜詩人会賞を受賞。2002年、第3詩集『今、ぼくが死んだら』で第12回丸山豊記念現代詩賞を受賞。他の詩集に『にぎる。』『ゆっくりとわたし』がある。現在、同人誌「Down Beat」同人、個人誌「独合点」発行中。 日本現代詩人会、横浜詩人会所属。
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金井雄二さん
受賞詩集『朝起きてぼくは』
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受賞の感想 |
今回、四季派を代表する詩人の一人、丸山薫の名を冠した賞を頂けることは、驚き以外の何ものでもありません。そして、この上なく嬉しく光栄なことだと思っています。
詩を書き始めた頃、丸山薫の詩集を小脇に抱え、毎日読み続けた記憶が蘇ってきました。懐かしさとともに、初心にかえることができたようにも思います。
私の詩集を選んでくださった選考委員の方々、またこの詩集に関わっていただいた皆様、そして読者の方々にも、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。 |
贈呈式 |
平成28年10月21日(金曜日)豊橋市内のホテルで行われました。日本現代詩人会会長の以倉紘平さんら約80名が出席されました。 |
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