第24回丸山薫賞選考委員会は9月1日、豊橋市役所で開催された。昨年と同じ菊田守、新藤凉子、高橋順子、八木忠栄、八木幹夫の5名の選考委員が選考にあたった。
候補詩集は、峯
澤
典子『あのとき冬の子どもたち』、
坂多瑩子『こんなもん』、
平岡
敏夫『塩飽から遠く離れて』、
岩阪
恵子『その路地をぬけて』、
小松
弘
愛『眼のない手を合わせて』、
井川
博
年『夢去りぬ』の6冊。
詩歴の長い方の中に若い詩人もいる。どの詩集にも魅力があり、選考も難しいと思って選考に臨んだ。
司会進行は八木忠栄、各選考委員が自分の推薦する候補詩集について、どの点を高く評価するかを発言し、それに対し他の選考委員から忌憚のない意見もとび交う選考会となった。
自然に3冊の詩集に意見が一致した。
すなわち峯澤典子詩集『あのとき冬の子どもたち』、岩阪恵子詩集『その路地をぬけて』、井川博年詩集『夢去りぬ』の3冊。
この3詩集について意見の交換が行なわれ峯澤典子詩集『あのとき冬の子どもたち』を候補から外すことになった。
峯澤典子詩集『あのとき冬の子どもたち』は自らの日常生活を美しい日本語とすぐれた技法で表現している点が評価されたが、自らの苦しい体験は個人体験であり、詩の拡がり、スケールという点で考えさせられた。
最後に残った2詩集について、活発な意見が交わされた。2詩集は対照的な詩集である。
岩阪恵子詩集は散文詩集であり、井川博年詩集は行ワケ詩集。
この2詩集について、各委員が意見を交換し、どちらが賞をとってもよい好詩集ではあったが、最終的には5人の委員全員一致で、第24回丸山薫賞は井川博年詩集『夢去りぬ』に決定した。
岩阪恵子詩集『その路地をぬけて』は、散文詩である。『その路地をぬけて』からどの一篇をとっても短篇小説にしてもよいような詩の世界をつくり上げる技法は見事である。
井川博年詩集『夢去りぬ』は長い詩歴を持つ詩人の生きた人生をさりげなく書いているように見えるがそうではない。詩の魅力をたっぷり詩集の中に盛りこんでいる。
詩集冒頭の詩「桃の小枝を手に持って」を見てみよう。
桃の小枝を手に持って 井川博年
ふくらみかけた桃の花/桃の小枝を手に持って/家に帰ろう/家に帰ろう/誰にあげたいわけでなく/誰に見せたいわけでなく/持ってるだけでほっとして/持ってるだけで明るくて/つぼみがいっぱいついている/桃の小枝を手に持って/家に帰ろう/家に帰ろう(全行)
第24回丸山薫賞は、井川博年詩集『夢去りぬ』(思潮社刊)に決定した。
(文中敬称略)
(選考委員 菊田守 記)
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