抗菌薬(抗生物質)は細菌を壊したり増えるのを抑えたりする薬で、感染症の治療には欠かせません。
しかし、抗菌薬の不適切な使用による薬剤耐性菌の増加が問題となっており、このままでは2050年には世界で1000万人の方が、薬剤耐性が原因で亡くなると言われています。
薬剤耐性菌の増加を止めるために、一人ひとりが正しい知識を持ちましょう。
※AMR:Antimicrobial Resistance
薬剤耐性菌はどうしてできる?
生物には、病原体などの異物が侵入しても、白血球やリンパ球などの免疫細胞が退治してくれる免疫機能があり、体内に多く存在する常在菌も免疫力を保つための重要な働きを持っています。
体内に侵入した病原体の感染力が免疫力を上回ると感染症を発症しますが、適切な抗菌薬を服用すれば病原体を退治することができます。しかし、服用後わずかに生き残った病原菌が、抗菌薬から逃げ延びようとして構造を変化させることがあります。その変化によって抗菌薬が効かなくなった(効きにくくなった)菌が薬剤耐性菌です。
薬剤耐性菌がわずかであれば、免疫力によって病気の発症を抑えることができます。ところが抗菌薬は体内の常在菌も攻撃してしまいます。そのため、薬剤耐性菌がいる状態で抗菌薬を中途半端に服用すると病原体を抑えつける常在菌がいなくなってしまい、かえって薬剤耐性菌が増えてしまうことになります。
体内で増えた薬剤耐性菌は感染者から排出されて、人から人へ、また、病院などの施設の中や環境にも広がっていきます。
薬剤耐性菌をふやさないために
ほとんどの「かぜ」に抗菌薬は効きません
抗菌薬は細菌に効果のある薬です。しかし一般的な「かぜ」の原因の多く(80~90%)はウイルスで、ウイルスに抗菌薬は効きません。(ウイルスに効くのは抗ウイルス薬)
風邪っぽいからといってむやみに抗菌薬を服用すると、薬剤耐性菌を生むだけでなく、副作用や体内の常在菌の減少によって、かえって体調を崩してしまうことがあります。
「かぜ」の症状がある時は、自己判断で抗菌薬を服用せず、医療機関を受診しましょう。
処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう
抗菌薬は100種類以上あり、医師は患者の状態に応じて抗菌薬を処方します。症状がおさまってもしばらくは体内に病原体が残っていることがあるので、処方された抗菌薬は用法用量を守って最後まで飲み切りましょう。
また、同じような症状でも原因が同じとは限りません。残ってしまった抗菌薬をとっておいて後で飲んだり、他の人に処方された抗菌薬を飲んではいけません。
わからないことは医師や薬剤師に相談しましょう
副作用の恐れがあったり、指示されたとおり抗菌薬を服用しても症状がおさまらないときは、医師や薬剤師に相談しましょう。
感染対策として日頃から予防しましょう
感染を防ぐためには、手洗い・咳エチケットといった日頃からの予防が大切です。
ワクチンで予防できる感染症もありますので、予防接種の機会を活用しましょう。
参考